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「夫婦別姓」と「戸籍制度廃止」(10)

前回】のつづき>>>>

 

 

 

ドアを開けて部屋に入ると、ひんやりとした澄んだ空気の匂いがした。

オフィスを急ごしらえで改造した部屋のようだが、小さなキッチンとシャワールームも付いている。

部屋の中央には広めのベッドがあり、リネンがきれいに畳まれて置いてあった。

 

小さなキッチンの冷蔵庫には、水と保存の効く食料が入っていて、食器も一揃い用意されていた。

当座の生活には、充分な住まいだ。

 

美和子は、荷物を部屋の隅に置くと、ブラインドを開けた。

薄暗かった部屋に明かりが射すと、部屋が広々と感じられる。

 

ようやく落ち着いた気分になった美和子は、キッチンにある真新しいコーヒーメーカーにコーヒーをセットした。

窓辺のデスクに腰かけ外を眺めると、遠くの丘に西陽があたり、建物や岩肌を薄紅色に染めている。

空の色も夕暮れの風景も昔と変わらないのに、日本という国は今、異常を来している。

世間の様相が変わっても、自然の営みに変化がないことが、却って世の無常を感じさせる。

部屋に充満するコーヒーの香りが、疲れた美和子の神経を覚醒させた。

 

日本に戻って、まだ二日目だと言うのに、次々と起こる予期せぬ事態が、すでに数週間も過ぎたかのような錯覚を起させた。

行方不明になっている父母と妹の涼子を思い出すと、胸の奥が重く沈んでいくようだ。 

涼子が、大学の韓国語サークルに誘われて韓国へ出かけて行ったという話は、少し軽率なように感じた。

日本とアメリカでは、韓国人に対するイメージが大きく違うのだろうか。

アメリカでは、売春や麻薬で問題を起こしたり、 学内でも他のコミュニティに交わらず同胞同士で凝り固まっている韓国人留学生とは、誰もが自然に距離を置いていた。犯罪やレイプが多い韓国への旅行は、ほとんど見向きもされていなかった。美和子が、日本を発つ前に日本で韓国に興味を持つ人が多くいたような記憶もない。そういえば、中高年の間で韓国ドラマが話題になっていたような記憶がある。が、その程度だ。

 

コーヒーカップを探そうとして立ち上がると、ドアを叩く音がした。

 

「松永さん?与一の母の寺坂君江です」美和子が、ドアに駆け寄ると向こう側から声がした。 

 

美和子は、ドアスコープを確認するとそっとドアを開けた。

「こんにちは。与一から電話があったものですから」

寺坂君江は、四〇歳ぐらいの明るく気さくな雰囲気の女性だった。

「はじめまして、松永美和子です」

「何か、困った事はありません?足りないものとかあったら言ってちょうだいね」

「今のところ大丈夫です」

美和子は、微笑みながら答えた。

「あ、ちょうどコーヒーが入ったところですので、召し上がって行きません?私、帰国したばかりで、訳がわからなくて教えて頂きたことが・・」

「ああ、そうでしょうね。ご家族の件も聞いています。分る事なら、何でも答えるわ」

 

美和子は、君江を招き入れると小さなダイニングテーブルの2つある椅子の一つを勧めた。

コーヒーを入れたカップを二客、テーブルに置くと、君江に向かい合って腰かけた。

「寺坂さんは、川村さんのお知り合いなんですって?」

「ええ、そうなんです。コーヒー、いただきます」

君江は、コーヒーの香りを吸いこんでから口に含んだ。

「川村先生に、お花を習っていたことがあって」

「ああ、川村さんのお弟子さんだったの」

「先生のところには、何度か与一を連れて行ったことがあるから、先生が息子の顔を覚えていてくれて。街で物乞いをしていた息子を助けてくれたのよ」

「与一君は、児童福祉センターにいたそうですね」

「そうなのよ。でも、福祉センターとは名ばかり。ロクな食べ物もなくて、不衛生で、ほとんど収容所だったって与一や他の子供たちも言っているわ」

「他の子供たち?」

「与一と一緒にセンターを抜け出した子供たち。十人ぐらいいるんだけど、みんなで、協力して浮浪児をやってたみたい。浮浪児の方がましなんて、よっぽど酷い生活していたんでしょうね。今、一階と二階に住んでいるのよ」

「そんなに?全員がこのビルに?」

「与一が、川村先生に拾われてね、先生が昔からお世話になってた議員の先生に相談して、私を女性救済センターから引き取ってくれたのよ。そのついでに、子供たちもこのビルに住むことになって。」

「でも、そんなに大勢の子供たちを引き取ったりして、余程、財力があるのね」

「子供たちは、矢頭さんの仕事を手伝ってるのよ。みんな、自立した子ばかりだから、生活の場と食料なんかを提供するだけでしっかり仕事してくれるから、却って助かってるって、矢頭さん達も言っているわ」

「先輩は、子供達まで使ってるの?」

美和子は、声のトーンを高くして言った。

「みんな、何かをやりたがってるのよ。今の世の中じゃ自分たちの将来も何もないでしょう。それに学校は完全に崩壊してるから」

 

「そう言えば、女性救済センターにいらしたそうですけど、どんな所なんですか?川村さんが・・」

「女性の地獄って言ってたでしょ」君江は、笑った。

「あそこも、児童福祉センターと大して変わらないわ。ううん。もっと酷いかも。私のいた所は、おばさん専用のハピネス棟だったから、ただの収容所って感じでまだましだったんだけど。若い女の子たちがいるドリーム棟は、本当に地獄らしいのよ」

「らしい?」

「ええ、私たちも直接見たわけではないから。でもね、私があそこにいた何ヶ月かの間に、ドリーム棟で二回も飛び降り自殺があったし、あそこで働いてる職員がドリーム棟のことをブロイラーなんて言ってる事があったから、なんとなくあそこで何が起きているのか、ハピネス棟の人たちも薄々感づいていて」

「ブロイラー?」

「ええ。IDカードの事は、知ってるわよね。納税者番号が書かれている・・」

「ああ、はい。川村さんから聞きました」

君江は、バッグから自分のIDカードを出してテーブルに置いた。

「この番号Wで始まってるでしょ。これ『倭人』って意味なの。感じ悪いでしょう。日本人のNとかJapaneseのJなら分るけど。で、この日本人IDカードを民主党政権の連中はWカードって呼んでるの。Wカード保持者は消費税が100%なだけじゃなく所得税や相続税にも違いがあるの。」

君江は、険しい表情をした。

「うちの旦那が亡くなった後、旦那が残してくれた小さな家を相続したんだけど、Wカード保持者は相続税の控除がゼロだから、突然、何百万もの相続税を請求されて。旦那は、癌でずっと入院してたから医療費も掛ったし、私の収入だけじゃ生活するのがやっとで貯金なんて全然なかったのよね。それで、あんな小さな家なのに差し押さえられて、住んでいられなくなったの。あとは、与一から聞いたと思うけど、私たちそれぞれ収容所みたいな所へ入れられて・・。腹立たしいんだけど、今あの家には見ず知らずの韓国人が住んでいるのよ。民主党は、差し押さえた住居なんかを外国人にタダで提供してるのよね。もうメチャクチャ」

「そういえば、私の家を乗っ取ってるのも韓国人みたいだったわ」

「ともかく民主党政権は、日本人から搾取して外国人を優遇するのが基本政策だから。それでね、Wカード保持者の子供は、代々ずっとWカードになるのよ。そういうことが分ってると、若い人も結婚したり子供を作ったりしなくなるわよね。それで困った民主党は、Wカードの子供たちを産ませる施設を作ったみたいなの。それが、あの女性救済センターの実態なのよ。表向き生活に困窮した女性やシングルマザーの出産を援助するセンターってことになってるけどね」

 

シングルマザーの助産センターの話は、アメリカの新聞でも取り上げられていたが、国連人権委員会から絶賛されているという内容だった。美和子は、民主党政権が海外に発信するメッセージと実態の乖離に、旧共産圏の裏と表を見るような気がした。

 

「センターの同じ部屋にいた人から聞いたんだけど、カンボジアがポルポト政権だったころ、国が結婚相手を勝手に決めて、強制的に男女を結婚させて産めよ増やせよっていう政策をやってたらしいんだけど、それと同じやり方らしいのよね。で、そういう年齢を過ぎた私たち中年のおばさんは、貧困女性の救済センターっていうカモフラージュに使われているってわけ」

 

アメリカでも人権や女性の地位向上のために働いている人たちは沢山いた。でも、旧共産圏のような社会主義的な方向性には、誰もが否定的だった。

 

 

――― 気が狂っている。民主党は、気が狂っている。

 

 

 

 

>>>> つづく

 

AUTHOR: 2003-iza DATE: 08/05/2010 14:37:44 こんにちは、 気が狂っているのは、マスコミも入ってますね。
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