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茶の話(9) 利休とソムリエ

先日、とあるレストランに参りまして、「こないだ飲んだ、あのウマウマなワインが飲みてー!」とソムリエ様にお願い申し上げました。

 

ソムリエ様といいますのは、どなたもとても優しいお方。わたくしの願いをすぐに叶えてくれるのでございます。

 

前回堪能したのと同じ、あのウマウマなワインのボトルを拝見させていただき、うん!と頷きますと、グラスにレンガ色の液体を注いでくださるのでございます。

 

と申しましても、わたくし、ただの飲兵衛でございまして、ワインの味など分る道理もございません。しかしながら、なぜか前回頂いた時のような感動的な香りと味が堪能できなかったのでございます。

 

そこで、不躾なわたくしはソムリエ様に申しました。

「本当にこのあいだのワインニカ?なんか味が違うニダよ!」(なぜかニダ言葉・・・)

 

そのようなおバカな質問にも丁寧にお答えくださるのが、一流のソムリエ様というものでございます。

 

「銘柄、ビンテージともに前回と同じでございます。」

 

ふーん、そうかなー・・・(ボトルを見せてもらっても、前回と同じものか確認できなかったヨッパライの寝言)

 

「お客様、ワインと申しますものは、その時、その時、味が異なるものでございます」

 

えー、そうなのー!

 

「湿度や気温といった条件もございますが、何よりもその場の雰囲気や一緒に飲まれる方など、お心を浮き立たせる要因があればこそ、ワインの味や香りに『感動』が生まれるのでございます」

 

えー、それじゃこの間のウマウマなワインは二度と飲めないわけー?!

 

「様々な条件を考えますと、同じ感動が二度生まれることはございません。しかしながら、新たな感動が生まれることはございます」

 

わたくし、この時初めて知ったのでございます。

 

ワインとの出会いも、「一期一会」であることを。

 

*********************************************

 

さて、「一期一会」と言えば、最もよく知られた茶の湯の禅語でございます。

 

平安末期に茶と茶の湯の作法が栄西禅師に持ち込みまれしたことから、茶の湯と禅は深いかかわりがございます。

当初、僧侶の間で親しまれた茶の湯は、禅宗と関わりの多い武家階級に広まりましたことは、以前ご説明申しあげました。

武家階級では、茶の銘柄を言い当てる「闘茶」あるいは「茶寄り合い」といった遊びの茶が大流行いたしました。

 

しかし、室町時代中期にもなりますと、幕府の財政難から武家や貴族の生活も困窮するようになり、このような派手な茶会は開かれなくなったのでございます。

 

その後、八代将軍足利義政の時代。銀閣寺や東求堂などを建て、自分の趣味に生きることを好んだ義政は、僧侶との付き合いが深まるにつれ茶の湯も楽しむようになったのでございます。

利休の弟子の記した『山上宗二記』によりますと、ある時、義政は身の回りの相談役であった能阿弥を呼び「世の中の遊びごとは、もう飽きたから何かほかに変わったものはないか?」と尋ねたそうでございます。すると能阿弥は「村田珠光という者が30年も前から楽しんでおります、茶の湯がございます」と答えました。

 

義政は、さっそく珠光を招き、茶の湯についていろいろと質問いたしました。

珠光は答えます。「茶法と言うものはただひたすら清くして、禅にそったものであって、それが茶法の極致であり、最も根本的な精神です」

 

義政が、茶の湯を楽しむようになりますと、これが一般にも広まり、町や寺の門前で一服一銭の茶を商う者まで現れました。

 

珠光の茶の湯は、それまでの華美に過ぎた遊びの茶に反して、簡素で落ち着いたものでございました。

この茶法は、後の武野紹鷗の「侘び茶」の出現に大きな橋渡しの役割を果たします。

紹鷗は、ちょうど珠光が亡くなった年に生まれ、歌道や香道などの教養を身に付けた後、珠光の弟子に茶の湯を学んだと言われております。こうして紹鷗は、珠光が理想とした草庵の茶を一層簡素にし、いわゆる「侘び茶」を始めたのでございます。

 

この侘び茶の精神を受け継いだのが千利休でございます。利休は「珠光に道を得、紹に術を得」と二人の侘び茶の先人を讃えております。

 

前出の『山上宗二記』に、紹鷗の言葉として「常の茶なりとも、露地へ入より出るまで一期に一度の会のやうに、亭主を可敬畏(うやまいおそれるべし)、世間雑談無用也(せけんのざつだんはむようなり)」と記されております。

 

これが「一期一会」の精神でございます。

 

これを、茶の湯の基本精神として大きく取り上げましたのが、幕末の大老、井伊直弼がまとめた「茶湯一会集」でございます。

井伊直弼と言えば、桜田門外の変で暗殺された開国派の幕臣として有名でございますが、直弼は若いころより茶の湯に傾倒し、大老職に就いた後も激務の合間を縫い茶会を催していたと言われております。

 

「茶湯一會集」には、このようにございます。

 

此書は、茶湯一會之始終、主客の心得を委敷(くわしく)あらはす也、故に第號を一會集(いちえしゅう)といふ、猶、一會ニ深き主意あり、抑(そもそも)、茶湯の交會は、一期一會といひて、たとへハ幾度おなし主客交會するとも、今日の會にふたゝひかへらさる事を思へハ、實ニ我一世一度の會也、去るニより、主人は萬事ニ心を配り、聊かも麁末(そまつ)なきやう深切實意を尽くし、客ニも、此會に又逢ひかたき事を辡へ、亭主の趣向、何壹つもおろかならぬを感心し、實意を以て交わるへき也、是を一期一會といふ

 

簡単に申しますと、そもそも茶の湯の会の交わりは「一期一会」と言って、同じ主客が何度会を持っても、今日のこの会は二度とない事を思えば、一生に一度の会。したがって、亭主は万事に心を配り、客もまたこの会は二度とないことを弁え、亭主の趣向をおろそかにしないよう誠意をもって交わるべきという、茶の湯の基本精神を述べておられるのでございます。

 

「一期一会」は、最も有名な茶の湯の言葉となっておりますが、大老の記した「茶湯一會集」の真意は、本当の一生に一度の機会を指しているのではなく、日常繰り返し行われる事の中に「一期一会」を常に意識すべし、つまり「二度とない今と言う時を大切に」ということにございます。

 

しかるに、この「日米「一期一会」の物語 福島テレビ・関口由香里アナウンサー」という記事に見られます「一期一会」という言葉の使い方は、いかなるものかと首をかしげざるを得ないのでございました。

 

近頃は、アナウンサーでも日本語の不自由なお方が増えておいでのようで・・・・

 

 

AUTHOR: tm05311 DATE: 07/24/2010 19:42:28 きましたね。ここに切れ込んできますか。神話の領域ですよ。 ワインは、銘柄、ビンテージが同じなら、同じ品質と思い込む理由は? ワインの質が均質だと思う理由が分かりません。ビンごとに違います。 その上で、人間は1度美味いと思うと、それと同じモノを美味いとは、 感じなくなります。もっと美味い物を求め始めます。 「一期一会」に戻りますが、人間の本質を見抜いた言葉ですね。
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To hanehanさん
>レンガ色のワインということは、かなり熟成の進んだ逸品ではww
>
ワインのことは良く分らない飲兵衛なので、ソムリエさんには予算しか告げませんww 名前も覚えられないので「こないだのアレ」とかリクエストしてますwww
>『一期一会』というのも、大切な者を亡くしてはじめて実感できたように思います。そして、金では換算できないものが人生にとって一番大切な事であるとも。
>
大切な方を亡くされたと聞きますと胸が痛みます。本当に、毎日を一期一会の精神で生きなければいけないと思うのですが、なかなか実践は難しいです。

To maazさん
>焼酎でも飲んでおれとww
チルチルメチルでも、飲んでおけば良いよ。
「一期一会」を大仰に捉えすぎだと思います。
今日と同じ明日は、絶対に来ないだけなのです。

To tm05311さん
>To maazさん
>>焼酎でも飲んでおれとww
>
>チルチルメチルでも、飲んでおけば良いよ。
中国あたりで、よく飲まれていそうな危険物ですねww
遠慮しますww
>「一期一会」を大仰に捉えすぎだと思います。
>今日と同じ明日は、絶対に来ないだけなのです。
茶道は、禅の道なので、日常の中に真理を見出すみたいなところがあるのですね。そういう奥深さが世界中の愛好者を魅了するのでしょう。妬んで、ウリナラ起源ニダーと言いだす連中もいますがww

禅宗→ 武家→ 茶道→ 一期一会とつながる数珠のループはとても引き締まった「感覚」を感じさせます。
茶飲み話で茶を点てる場合と、明日はどうなるとも知れぬ場合で点てる茶の湯では、キリキリとした空気が切り取られる思いがします。それが武士に伝わるのでしょうか。

To 相模さん
>禅宗→ 武家→ 茶道→ 一期一会とつながる数珠のループはとても引き締まった「感覚」を感じさせます。
>茶飲み話で茶を点てる場合と、明日はどうなるとも知れぬ場合で点てる茶の湯では、キリキリとした空気が切り取られる思いがします。それが武士に伝わるのでしょうか。
茶道は、ほとんど禅宗の一派みたいな感じです。家元は代々得度しますし、茶道の普及活動じゃなくて布教活動と言っています。利休七則という教えもありまして、なんかモーゼの十戒みたいな・・
武士が茶の湯に安らぎを求めたのも、なんとなく理解できるような気がします。

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