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茶の話(12) 高麗茶道は、なぜ廃れたのか?

さて、今回は韓国茶道最大の謎「高麗茶道はなぜ廃れたか」でございます。

 

現在の韓国では、茶を飲む習慣がございません。その韓国に茶道の歴史があったと主張される方々は、どなたも「李氏朝鮮時代に儒教の影響で仏教が衰退したため」という言い訳、もとい、理由に、朝鮮半島における喫茶文化衰退の原因を求めるようでございます。

 

さて、衰退する以前の朝鮮半島の喫茶文化でございますが、韓国茶道協会京都支部の尹道心先生によりますと、

 

「わが国の茶文化は三国時代から中国から伝来し新羅、高麗にかけて仏教とともに隆盛をみせておりましたが、朝鮮王朝三大王(太宗)時から衰退していく中、僧やソンビ達によって脈を繋いで参りました」

 

とのことでございまして、なんと朝鮮半島の喫茶文化は三国時代の新羅に続き高麗にかけて、500年もの長きに亘り隆盛を見せていたのでございます。

 

そして、その500年間に亘り隆盛を見せた喫茶文化が、儒教の影響で仏教が衰退しただけで廃れてしまったというのでございます。

 

このような現象は、世界広しと謂えども、朝鮮半島以外では見当たらないものでございます。

 

例えて言うならば、16世紀の安土桃山時代に隆盛を見せた日本の茶の湯文化が、20世紀の廃仏毀釈で衰退するようなものでございます。

廃仏毀釈で衰退どころか、裏千家十五世鵬雲斉は大戦中、飛行場の特攻機の前で野点を行い特攻仲間に茶を振舞っております。この特攻仲間には、水戸黄門で有名な俳優、西村光さんもいらっしゃいました。

 

喫茶も一つの食文化でございますが、食文化というものは隆盛を極めますと、あらゆる階層に広まります故、それを伝えた階層が衰退いたしましても無くなるものではございません。室町時代に、ポルトガル人が伝えたとされるカステラ、天ぷら、金平糖が、秀吉によるバテレン禁止令で衰退したという話は寡聞にして聞きません。それどころか、それまで一部の階層でしか食されなかったこれらの食品が、江戸時代には町人が食するまでに広まり、天ぷらに至りましては、現代では、ずうずうしくも日本食の代表のような顔をして世界中に知られておる程でございます。

 

また、食文化は一度広まりますと、その担い手も増え、様々な形に変化するものでございます。

日本の茶文化も、平安末期に栄西禅師が伝えた以降、僧侶が茶文化の担い手として中心的役割を果たしておりましたのは鎌倉時代まででございます。鎌倉末期に禅僧と交流の深かった武家階級に広まりますと、室町初期には一般にまで普及し、路上で一服一銭の茶を売るものまで登場いたします。

 

そもそも僧侶の茶文化は、修行時の覚醒に役立てたり、薬効を調べたりと、文化というより学問に近く、武家や一般には面白くないものでございました。そこで、豪華な食事の後に茶を飲み銘柄を言い当てて賭けをする「闘茶」など、遊びの茶が大流行いたします。この傾向に反発しまして「草庵茶」を始めましたのがわび茶の祖、村田珠光でございまして、やがて、利休のわび茶が完成することとなります。ところが、江戸時代に入りますと、今度は形式ばった茶の湯に反発しました文化人が隠元禅師の持ち込んだ「煎茶」を流行らせることとなります。

現代に至りましては、ペットボトルのお茶から抹茶アイスクリームまで、茶の用途は更に幅広くなり、仏教には縁のない異教徒の方々にまで楽しまれておるのでございます。

 

このように、時代が変わりますと担い手と共に文化の形も変わります故、一度、隆盛を極めた文化というものはしぶとく生き残るものでございます。

 

茶の湯そのものを見ましても、現存するのは宮家茶道、武家茶道、町人茶道でございまして、僧侶の茶道はございません。もっとも、茶道とは茶の湯を通して一般人が仏教の修行をするものでございますから、僧侶が茶道を行う理由もございません。嗜みに茶の湯をされる方は、いらっしゃいます。

 

1191年に栄西が茶と点茶法を伝え、1403年には一服一銭の茶売りが登場。つまり、およそ200年のうちに一般人も茶を飲むようになったのでござます。さらに、豊臣秀吉が北野大茶会を開催いたしましたのは1587年。この時、茶の湯の心得のある者は、町人、百姓に至るまで必ず来るべし、服装、履物、序列は問わず、道具はどのような物でも茶が点てられれば良し、数寄者(道具マニア)は自慢の道具を展示せよとお触れが出ております。

なんと、点茶法が伝えられて396年後には、百姓までもが秀吉の前で茶を点てられるほどに、茶の湯の心得までが浸透していたのでございます。

 

 

一方、朝鮮半島で喫茶文化が隆盛を極めたのが500年間。

その間、僧侶以外に喫茶文化の新たな担い手は育たなかったのでございましょうか。

「高麗茶道は華麗な宮廷文化」などという宣伝文句すらございますが、朝鮮の宮廷人たちは仏教を離れた独自の喫茶文化を育てる能力がなかったのでございましょうか。

 

このミステリーを解くヒントが、李氏朝鮮時代の清国への貢物リストに含まれております。

清国は、朝鮮に茶千包を毎年贈らせておりましたが、その茶千包は北京より輸入したものを清国に貢がせておりました。

まるで、ジャイアンがのび太に実家の雑貨屋で購入したものを自分にプレゼントさせるような横暴ぶりでござますが、つまり、朝鮮の茶は清国に貢げるほど品質も高くなく生産量も少なかったということでございます。

 

 

このことは、高麗茶道が廃れた原因の2つの可能性を示しております。

 

一つは、喫茶文化を維持すべく茶の生産を試みたが、どう頑張っても朝鮮半島では良い茶が育たなかった。

 

もう一つの可能性は、良い茶を生産しようという熱意が生まれるほど、高麗茶道は隆盛を極めていなかった。

 

 

いずれに致しましても、かの半島の方々は、うまい飯が食いたいという一心で寒冷地でも育つコシヒカリを開発する日本人とは、農業に対する熱意が大きく異なるようでございます。

 

 

 

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韓国茶道(高麗茶道)シリーズ

 

茶の話(1) 茶葉の話

茶の話(2) 「相棒」杉下右京の珍推理

茶の話(3) 韓国茶道では、なぜトイレットペーパーを使うのか?

茶の話(4) 韓国茶道では、なぜ保温ポットを使うのか?

茶の話(5) 続・韓国茶道では、なぜ保温ポットを使うのか?

茶の話(6) 韓国茶道では、なぜ急須を使うのか?

茶の話(7) 韓国茶道では、なぜトレイを使うのか?  

茶の話(8) 韓国茶道では、なぜ茶杓を使わないのか?

茶の話(11) 韓国茶道には、なぜ流派がないのか?

茶の話(12) 高麗茶道は、なぜ廃れたのか? 

 

 

AUTHOR: ご隠居 DATE: 08/19/2010 21:29:48  日本列島での茶の栽培の北限は新潟県村上市です。冷涼な朝鮮半島で茶の栽培が盛んだったはずもなく。
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非公開コメント

To tm05311さん
>いつもお茶の話は最高に面白いです。よく考えられていますし。
>高麗茶道は元々無かったとするのが、自然なようですね。
>お茶の産地では無くても英国のように買ってくれば済むのですが、
>世界屈指の貧乏国の朝鮮じゃ買うこと自体無理だっただけでしょう。
英国はインドを植民地にしてまで茶をゲットしてましたから。
ヨーロッパ人が、スパイスがないと生きていけない!お茶が無いと生きていけない!という一心でアジアに進出したことを考えると、半島でお茶が隆盛を極めたとは到底思えませんww
茶の話シリーズは、アップすると普段の倍以上アクセスがあるので、興味を持って下さる人が多いようです。つまらない事を書くと怒られそうで・・・

はじめまして
「正座と日本人」丁宗鐵(てい むねてつ、講談社刊)が発端となり、貴ブログを知りました。
この本には、正座を主題に論じながら、茶道が朝鮮由来ということが当たり前のように書かれていたのです。
「高麗茶道」という聞き慣れぬ言葉(54ページより記述)が、史実に織り交ぜたように書かれています。
加えて、高麗茶道の確立を補強するかのように、千利休の名字である、「千」は「高麗には普通にあった名字」と記載されている。
あるいは、「にじり口」は朝鮮建築の典型例とあり、茶室の「小間」は、江戸時代までは「高麗」と書き、朝鮮建築のこと……などと言い切っています。
そして利休は「高麗趣味を堂々と表に出す人」だとも記してある。
キリシタンを俎上にあげたうえで、利休の思想とは、インターナショナルであるとも結論づけています。
日本史の説明のなかに巧みに、何気なく、紛れ込ませているように思えてならないのです。
はっきりいえば、このような叙述には、強い違和感があり、史実や実在した人物に憶測を巧妙にブレンドした書き方に感じたのです。一種のサブミリナルを狙うような記述とでもいいましょうか。
高麗茶道については、さして言及せず、すでに事実として存在した文化で、しかも脈々と伝わっていたように記載されているのです。
私はいまだにこの著者の正体や思想が判然とせず、それが逆に狡智に感じるばかりでいます。
脈絡のないまま書き綴りましたが、この本を途中まで読んで、熱くなったままコメントを書いてしまいました。
今後のとも貴ブログ、愉しみにしております。

To purpule-dさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
これはまた面白い本の情報を頂きまして、ツッコミどころ満載ですので、ぜひ次回の参考にさせて頂きます。
因みに、正座は朝鮮半島では「罪人」の座り方です。

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