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「夫婦別姓」と「戸籍制度廃止」(6)

【前回】のつづき>>>>

 

 

 

美和子は、智恵子のアパートを早々に後にした。

自分の家族の失踪と、川村家に起きた出来事に関係があるとすれば、美和子が智恵子の部屋に長居することで新たな迷惑がかからないとも限らない。

別れ際に、智恵子はある住所を書いたメモを美和子に渡した。智恵子にアパートと仕事の世話をしてくれた人たちがいると言った。

 

なんだろう。川村さんは、名前は言えないと言っていた。メモの取り扱いにも気を付けてと。

 

美和子は、来た時に通った路地に向かってあるいた。女性救済センターの建物が目についた。

女性の地獄 ―――― 智恵子がそう言ったのが気にかかった。何か内部事情を知っているような口ぶりだった。

路地を通り抜けると、駅に向かって歩を速めた。追われている確証があるわけではなかったが、できるだけ人目につかない方がいいと思った。

駅のコインロッカーから荷物を取り出すと、切符を買い改札へ急いだ。

 

美和子には、智恵子にもらった住所を訪ねる前に行きたいところがあった。

以前、何度かボランティアで手伝いをしたことのある、社民党の女性議員の事務所だった。

電車に揺られながら、昨日から起きたことを回想した。議員に会ったら、順を追って説明しなければならない。

社民党は、去年、民主党との連立を解消したというが、多少内部事情も知っているはずだ。

美和子は、目的の駅で降りると、スーツケースを持ったまま歩いて行った。

 

駅からほど近い議員事務所のあるべきはずの場所に来ると空家になっている。

建物は、以前と同じだが議員事務所の看板もポスターも無くなっている。

 

おかしいわ。

ほんの数日前、アメリカを発つ前にウェブサイトで確認した時は、議員事務所の住所は変わっていなかったはずだ。

美和子は、携帯を取り出し記録しておいた党本部に電話をしてみた。

 

―――― おかけになった番号は現在使われておりません・・・

 

背筋に、寒気が走った。

一体、どうなってしまったの?何が起きてるの?信じられないわ。

 

もう、何もかもが信じられないような気分だった。

周囲を見渡すと、道行く人が全員、あの陰険な人権救済委員に見えた。

美和子は、足早に駅に戻ると、智恵子から貰った住所の最寄り駅までの切符を買った。

 

電車のシートに腰かけ、窓の外を見ていると風景は以前と全く変わらないように見えた。

だが、実際には、失踪、乗っ取り、なりすましが横行しているに違いない。

戸籍制度が無くなってしまった今、いとも簡単に他人になりすますことができるのだ。

美和子は、北朝鮮による拉致被害者のことを思い出した。

工作員が、日本人を拉致してその人になりすます。そんな恐ろしい事が、訓練を受けた工作員でなくともできてしまう。

ふと、大学の先輩に聞いた話を思い出した。

ヨーロッパで拉致された男性が、命がけで書いた家族への手紙。それを、外国人に託して国外で投函してもらった。

手紙を受け取った家族の驚き。嘆き。そして、家族は助けを求めて、手紙を持っていく。

手紙を渡した相手は―――――土井たか子

 

美和子は、身震いした。

社民党は、元はと言えば土井たか子のいた社会党だ。

拉致男性の家族は、最も相談してはいけない敵の仲間に相談してしまった。

今、訪ねたあの議員に会えなかったのは、もしかしたらラッキーだったのかも知れない。

美和子は、危うく敵に情報を漏らし、智恵子や、今どこにいるか分らない自分の家族を危険に曝す所だったのかもしれない。

 

 

駅に降り立つと、もう日が高く上がっていた。

夏の日差しがアスファルトにてり返されている。

 

美和子は、駅を出ると、なぜか人目をはばかるように歩いて教えられた住所をめざした。

 

建物は、少し入り組んだ場所にあった。

ドアの横の呼び鈴を鳴らすと、機械音声が暗証番号の入力を促した。

美和子は、智恵子に教えられた8ケタの数字を入力した。

 

ドアが開いた。

中へ入るともうひとつドアがある。

そこでもう一回暗証番号入力をすると、開いたドアの向こうに誰かが立っていた。

「そろそろ来るころだと思ってたよ」

「先輩!」

美和子は、唖然として立ちすくんだ。

 

 

>>>つづく

 

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